2009/03/20

jig.jp 福野泰介社長インタビュー!!


好きなことを仕事にしてうまくいっている人にインタビューして、
夢を持てない人々に行動してもらいたい!と思い、始めたインタビュー企画です。


第一回はSF作家、ロバートJソウヤーさんでした。

そして4年ぶりの第二回は
携帯ソフトで有名なjig.jp社長、福野泰介さんです。


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メガネ会館、IT社長 - 福野泰介 (ブログ)



福野さんのすごさを簡単に説明します。

・若い(1978年生まれ)
・福井県鯖江市を開発の拠点にしている。
・鯖江を日本のシリコンバレーにしようとしている。
・世界一の企業を目指している。

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起業についてはドリームゲートによるインタビューがよくまとまっててお勧めです。






--- 子供のころの話 ---


● テレビゲーム好きからプログラムを始めたということですが、ご両親はどう感じてらしたのでしょうか。ゲームやパソコンの時間の制限はありましたか? 
福野: 「やりすぎるな」と言われてはいましたが、あまり守れてなかったですね。特にパソコンに向かっているときは、それほど言われなかったと思います。まあパソコンでゲームしてることも多かったんですけど。


● 新しい楽器を作るという趣味をお持ちなんですよね?(実際作られた楽器についてはTech総研のインタビューを)。
ピアノを習っている子供は多くても、新しい音を探す、という次元で考えている人は少ないと思います。 
昔からプログラム以外でも自分で何か創ることが好きだったのでしょうか?

名古屋にいた頃、お絵かき教室に通ってたんですが、そこでは絵を描くだけじゃなくて、焼き物のブローチを作ったり、工作をしたり、なぜか抹茶を飲んだりして楽しかったです。

基本的に図画工作は好きでしたね。音楽はエレクトーン教室に行ったことがあります。でも「この通り練習しなさい」みたいなのが嫌いでやめてしまったんですが。



--- 高専の話 ---




● 福野さんは中学⇒高専⇒起業という道を歩まれています。
「好きなコンピュータ以外の勉強はしたくないから、高専を選んだ」とのことですが、ご両親は賛成でしたか? 

反対は全くなかったですね。昔からあまり親の言うことを聞く子じゃなかったというのもあるかもしれないですが、親も「やりたいならいいんじゃない?」と理解をしてくれました。


● 高専では、プログラミングに没頭する日々だったのでしょうか。 
なにかしらプログラムはやってましたね。プログラムに関しては授業よりも独学のほうが速かったのでどんどん自分でやっちゃいましたね。
ちょうどインターネットが出始めたころで、チャットのシステムを作って、友達と夜な夜な盛り上がったりしてました。

簡単なゲームもつくりました。そのチャットの仕組みを使って、高得点が出るとリアルタイムで更新されるランキングシステムを作ったりしました。
ゲーム自体は単純なもので、ひたすら連打するとか、誰が一番きれいな丸を描けるか、というものでしたけど。



● 高専は、中学を出て5年間専門分野を中心に勉強するシステムですが、途中で「あ、俺、これ向いていない」と気づいちゃった人に逃げ道はあるのでしょうか。 
高専は3年間行くと高卒の資格がもらえるので、文系の大学に進学する人もいます。
また、高専を出て、工学とはあまり関係のない、例えば銀行とかに就職する人もいます。高専で基礎的な力をつけた人はいろいろなところで重宝されるようです。



--- 鯖江の話 ---

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jig.jp
がある、めがね会館。
鯖江はメガネ産業が有名です。
ビルの頂上にメガネが!



● 子供のころから、いろいろな街を点々とされていますが、なぜ鯖江に拠点を持とうと思われたのですか。 
一番の理由は仲間ですね。転校が多かったので、じっくり学校に通えたの初めての期間が高専の5年間でした。高専は1クラスが専門の学科なので、5年間クラス替えがないんですよ。そのときの仲間とは今でも仕事をしていますし、卒業後も先生と交流があって、人材を紹介していただいたりしています。


● 「鯖江を日本のシリコンバレーにする」という目標の達成のためには、学校と企業の連携が大切とのことですが、どのような連携が考えられますか? 
先生を通じたつながりは大きいですね。卒業後もいろいろなお話をしますし。地元と密着しているのが高専の特長でもあるので、それをどう生かすかが重要です。
企業とタイアップをして、国に何か提案するなどの活動を進めていきたいですね



● 実際に鯖江市でどのような取り組みをしていますか。 
今、私たちは「鯖江ユビキタス計画」というものを推進しています。市内のいろんな場所に赤外線の発信機をつけて、その場所の情報を携帯に送信するという仕組みを作っています。大容量のデータ送信がパケット代無しでできるのが魅力です。

鯖江市、たんなんFM(コミュニティラジオ局)、NECさん、jig.jpとの協業で進めていますが、やはり小さい町だからこそ、市役所やラジオ局を巻き込んだ取り込みができるんだと思います。

また、福井県は日本で一番社長率が高いんですが、鯖江市は福井県の中でも一番高いんです。そういう背景もあって、福井高専では全国の高専に先駆けて、アントレプレナーサポートセンターを作り、高専生に限らず地域の起業家をサポートする試みを行っています。

私も市長さんとは仲良くさせていただいています。新しいことに対して非常に寛容な方なんです。
以前、鯖江市役所の部長さんたちの前でお話しする機会があり、そこで「行政は学生を活用するべき」と提案しました。

学校との提携、といっても先生と話しているだけではなかなかうまくいきません。学生は活躍の場を求めているし、行政もコストの面で民間企業とは進めづらいこ ともあると思います。そこで情報をどんどんオープン化して、お互いのメリットを生かしたほうがいいと。我々がその間に入って手伝います、というプレゼンをしたところ、「それだ!」ということになりました。

それで、鯖江商店街にある一店舗を学生に任せたりとか、県外の学生を集めたシンポジウムを開くなど、学生の挑戦を支援するようになっています。



--- 起業、事業について ---


● プログラマーから経営者となると、「職人」ではない「マネージャー」の要素も必要となると思います。 
私の勝手なイメージかもしれませんが、技術者の方は、人と積極的に会ったり、批評されたりするのが苦手な方が比較的多い印象があるのですが、そういうことはもともとお得意だったのでしょうか。 

私 も基本的に得意ではないですね(笑)。私はプログラミングが好きで、今でも自分はプログラマーだと思っています。ただ、「作って楽しい」のではなくて、 それを「使ってもらって初めて楽しい」と感じます。さっきの学生時代のチャットシステムの話もそうですけど、みんなで盛り上がって初めて「よかったな」と 思うんです。

「経営者」という定義は難しいですが、私はお客様に喜んでもらうところまでを責任を持ってやりたいんです。だから単なる職人ではない仕事ができる今の「社長業」は気に入っています。

あ と、技術者に対するそういったイメージも確かにあると思います。ただ、実はそれは作られたイメージなんじゃないかなと思います。技術者というのはマネージ メント能力さえあれば、会社も作れて成果を出せちゃうんですよね。だから、それをさせないためにあえて理系・文系のイメージで分けられている、という陰謀説を私は信じてます(笑)。私が高専で話をするときも、「そんな陰謀に負けるな!」と学生に言っています。

そういった教育の一環が、福井高専で行っている起業教育なんですね。技術者が、一歯車ではなくて、技術者を使う立場に立って、「どうすれば世の中に価値を生み出せるのか」と広い視野で見ることが大事です。これが今まで技術者に欠けていた部分です。


● 経営に関する知識、例えば資金繰りなどはどうやって習得されていったのでしょうか。 
最終的には専門の者に任せているんですが、当然丸投げではいけません。「こういう形でいこう」と決めたあと、それが得意な人間に任せる。これができるのは会社組織のいいところですよね。そういった知識はそれほど深くは必要ないと思います。

やはり、会社を存続させるのには、どれだけのお客様にお金を払っていただけるか、そしてそれをどう使うか、という基本が大事なので、できるだけ分かりやすい経営、体制を作っていくように努めています。


● オープンソース等による無料ソフトのクオリティも上がってきています。こういった流れの中、技術力を売って拡大していくことはできるのでしょうか。
できると思います。一年ほど前から一眼レフのデジカメを使い始めたんですが、今の時代、写真を撮るのは誰でもできるようになりました。ただ、プロの写真家は 存在します。絵を描く、文章を書く、それも誰でもできる時代ですが、売れる人、売れない人、まあ売ろうとしない人もいますが、いろいろですよね。

大切なのは責任を持ってできるかということです。ユーザーはその責任を持ってやってる人に対価を払い、気持ちいい取引をする。本質的にそういう価値交換はなくならないと思うので、今後もまだまだ必要とされていくと思います。

ソフトウェアを作って終わりではなくて、実際にお客様に使ってもらって、クレームや要望に耳を傾け、逃げも隠れもせずサービスを提供し続ける、ということが大切だと思っています。


● Googleの技術力、Appleのデザイン力、Microsoftのシェアを目指しているとのことですが、海外展開は始まっていますか? 
既に始めてはいますが、まだまだ世界では携帯電話を使う習慣自体が乏しいエリアが多いのが現状です。逆にいえばチャンスなんですが、日本と海外との使い方にあまりに違いがあるので、いくつかのシナリオを持って進めているところです。
もちろん、携帯の文化は日本がはるかに進んでいることは間違いないので、世界に対して果たす役割は大きいと思います。


● 携帯にはネガティブな印象の報道が多いです。「小学生には持たせてはいけない」など、どう思われますか? 
ケースバイケースのところもありますが、テレビほど危険じゃないかなとも思います。
ネッ トを活用することで、今まで大人でしか触れられなかった情報を得たり、ネットワークが築けるようになっちゃうわけです。昔でいう「親に隠れて秘密基地を作 ろう」という感覚で、世界規模のものが作れてしまうのが携帯とネットの力です。そこまできているネットの力をあえて触らせないように箱入り娘のように育てるのは、それはそれで危険なんじゃないかとも思います。

むしろ、親とか先生が携帯に関する知識が乏しいことのほうが、問題ではないかと思います。
携帯を持つと危険になるような子供を持つ親を作ってはいけない、と思います。











オフィスの様子。
開発センターにしては結構活気がありました。



--- プライベート ---


● 仕事と遊びの時間は、きっちり分かれているのでしょうか。

一応分かれてはいますね。当然仕事と関係ないことをする時間はあります。ただそういう時間も、結局は仕事に繋がるとも思うので、そういう意味では境目は曖昧かもしれませんね。


● 朝起きて「あー、今日も仕事だー。。。しんどいなー」ということはありますか?

それはないですね。別にやらされてるわけではないので。好きでやってるわけですから、楽しいですよ。


● 夢を見るのが大好きとのことですが?

夢はかなり見ますね。見ない日のほうが少ないです。夢って、実際に見てる時間は短いんですよね。でも、いろんな要素が、時間軸も含めて凝縮されています。
あれをリアルでも再現できれば面白いと思ってます。映画を2時間見るのって、たるいことがあるので、時間軸もギュッと凝縮された夢的発信方法みたいなのができたらいいなと思ってます。


● では、カレーの話です。すっごい好きなんですよね?

すっごい好きです。


● 毎日三食、一か月でも行けるそうですが、本当ですか。

ぜんっぜん大丈夫ですね。
カレーは二ついいところがあります。もちろん「おいしい」のが一つと、もう一つは作るのと片付けに手間がかからないことです。このオフィスでカレーを作ることもあるんですけど、12時から1時の間に、買い物に行って、カレーつくって、食べて、片付けるところまでいけます。

早く作るこつは、カット済み野菜とか、豚汁の具セットみたいのを買って包丁を使わないようにして、ルーも肉も野菜も、煮立ってない鍋に全部入れちゃうんです。しかも夜も食べられちゃうので、コストパフォーマンスというか投資時間対効果は素晴らしいです。



--- 人生について ---


● まだお若いのですが、こうしておいたほうがよかった、という後悔はありますか?


「もしこうしたらどうだったかな」と思うことはありますけど、そのときのおかげで今があるので、後悔というのはないですね。いい意味でも悪い意味でも楽観的なので。
例えば、高専のころに「どうせシリコンバレー中心に動いているんだったら、もうそっち行っちゃおうか」と思ったこともありますし、会社も東京でやったらどうかと思ったこともあったし、経営の勉強も少しやったほうがよかったのかな?と考えたことはあります。

でも、いろいろ仮説を考えることは簡単なんですけど、もしそれらをやったとしても、その結果今よりいい状態になっている保証はないですからね。基本的には「今こうなっている現状にありがとう」と。そういう気持ちです。


● 本当に好きなことで生計を立てよう、という人は少ないと思います。
小学生の頃は「スポーツ選手になる」とか言う子供が多いですけど、高校生になって「楽しそうだからこの仕事に就こう!」って言う人は少なくなりますよね。
そういった人たちに何かアドバイスありますか?

人を好きになることだと思います。例え「自分の好きなこと」をやったとしても、その好きなことが内向きか外向きかで全然違いますよね。例えば、「ずっと寝て るのが好き」って言う人は外向き、つまり社会には何も提供できないですよね。まあ、睡眠のテスターとか、寝具の研究とかにはいいかもしれないですが。


● あと「寝顔が異常に可愛い」とかも外向きですよね。

あー確かに「寝顔専門グラビア」とかアツいですねー(笑)。結局、自分の好きなことを「外の人に対して提供すること」に軸を置けるかが大事です。単にサッカー が好きと言っても、サッカー選手になるのか、サッカー選手を育てるのか、応援するのか。とにかく、外向きに考えること、つまり社会とつながるかどうかを考 えることが大切です。


● 社会人でも、イヤイヤ仕事をしている人は多いと思います。
ただ、現実的にどうすれば好きなことを仕事にできるのか、どう一歩を踏み出せばよいのかわからない人が多いと思います。何か具体的なアドバイスはありますでしょうか?

ボランティアからでもいいので始めてみるといいと思います。まずお金ありきではなくて、人に対して何をしてあげられるかを考えることが基本だと思います。趣 味を持ってる人だったら、同じような趣味がある人に喜んでもらうためにブログを書くことから始めてもいいし、その楽しさを子どもとか退職して趣味を探しているような人に、「趣味入門」という形で提供してあげるとかもできますよね。

インターネットを使えば、世界中の興味がある人に見てもらえる可能性がありますし。そういうところから生きがいというのは見えてくるのではないでしょうか。
それでやってみて、「こうすればもっと喜んでもらえるんじゃないか」というのが見えてきたときに、もしお金で解決する問題であれば「じゃあ本職の仕事をちょっと頑張って給料上げてもらって、そのお金をつぎ込もう」とか、逆に「そっちの仕事の割合を増やしていこう」とか考えていけるかもしれません。

いきなり儲けてやろうと考えてしまうとどんどん曲がって行っちゃうので、タダでもいいから人に対してやってあげられる、というところから始めるのをお勧めします。


● そうですよね。私の考えになってしまいますが、みんな楽しく生きるための一歩を踏み出すべきだと思います。与えられている状況に満足しろ、という人もいますが、現状に納得せずに改善することが人類の発展につながると思うんです。
特に、豊かな国に生まれた僕たちこそが、その心の余裕を利用して何かを創り出して行かないと、他の地域の人にもいい影響を与えられないと思うんですよね。


福井に永平寺というお寺があって、そこに「足るを知る」という言葉があります。それは「現状に満足する」とも解釈されますが、成長をしなくていいという意味ではないと思います。世の中のいろんな不満はどんどん解消しようと努めるべきだと思います。

確かに「今の状況に満足しろ」というのは上司が部下の不満を抑えるために使うズルいセリフというイメージがありですが、「強欲になるな」と理解するのがいい のではないでしょうか。「自分は恵まれてない」と考えるとよくない方向に行くことが多いのは確かです。ですので、自分の状況に感謝の気持ちを持って、世の中の改善できるところはしていくべき、私はそう考えています。





以上でインタビューは終了です。
このあとの雑談で
「新しい言語も作りたいですね。英語をベースにしたシンプルな地球語があるといいですよね。とりあえずこれを覚えておけば、最低限の話ができる、っていう。」
とか話されていました。

いやーこういうスケールでかい話が聞けてほんとよかったです。